もちもち、なめらか、サクサク、ねっとり...

和食イメージ日本語には、食感を表現する多くの言葉があります。世界的に見ても、これほど多くの食感表現をもつ言語は他にはないと言われています。なぜ日本人はこんなにも食感を重視し、食感に敏感なのでしょうか。これには、日本人が慣れ親しんできた和食の食べ方と関わりがあるようです。

食感表現イメージ皆さんは、食べ物にさまざまな食感があることによって、食事が味わい深いものになるということを、考えられたことはあるでしょうか。

実は、食感には、味や香り(フレーバー)の強弱を変えるという性質があります。同じ量のフレーバーの成分が含まれていても、液状の食品の場合は粘度、固体状の食品の場合は硬さが大きいものほど、フレーバーは弱く感じられることが分かっています。

和食では、主食である白飯とおかずを交互に口に入れる食べ方が一般的です。味の強いおかずを、食感に特徴のある白飯と同時に口の中に含むことで、私たち日本人は、無意識に味の強弱を変化させ、味わいを複雑にしているのだそうです。このような"口中調味"(口の中で調味する食べ方)こそが、和食ならではの楽しみ方であり、和食に奥深い美味しさをもたらす秘訣と言えそうです。

このように食感に敏感な感性を備え、食感を巧みに利用して食事を楽しむ文化が、日本語の豊かな食感表現を生み出してきたのではないでしょうか。

新食感イメージ日本人の好む食感は時代に合わせて少しずつ変わります。最近では、カリふわ、サクとろ、などのように違いの大きい食感を組み合わせた新食感に人気が出てきているようです。食感をデザインすることで、従来品以上に訴求効果の高い新商品ができるかもしれません。

工業技術センターには、食感を測る装置として「クリープメータ2軸物性試験システム」が新しく導入されます。工業技術センターと一緒に、食感に着目した食品開発に取り組んでみませんか?


参考文献:

神山かおる: 「和食の「おいしさ」とは―化学・物理・生物的因子と食品テクスチャー(食感)―」 化学と教育 63 巻12 号616~617(2015 年)

早川文代: 「現代日本人の食感表現」 日本家政学会誌 Vol.60 No .1 69〜72 (2009年)

中村卓 他: 「おいしい食感と食品構造」 食品と科学 2012-12 59~64(2012年)