青空にワイシャツの洗濯物イメージ皆さんは日頃、衣類を使用している中で色落ち・色移り・変色を経験されたことがあるでしょうか。これらは、繊維製品を着色している染料や顔料が分解したり溶け出したりすることで起こる現象です。衣類を購入した当初の色合いは、日頃行う洗濯など様々な要因により、色落ち・色移り・変色が見られます。今回のコラムは、これらの主な要因について御紹介いたします。

色落ち色移り変色の説明イラスト

日光

太陽から放射される可視光線と紫外線は波長が短く、高いエネルギーを有しています。衣類の表面にこれらの高エネルギーな光線が長時間照射されると、衣類を着色している染料や顔料が分解し変色します。日光に暴露されやすい部分の変色が著しいことが特徴です。

漂白剤

衣類の洗濯絵表示ラベルに「漂白剤使用不可」と表示されているものに誤って漂白剤を使用することで、漂白剤に含まれている塩素などの化学物質が、衣類を着色している染料・顔料を分解し、元の色合いへ復元することが不可能になることがあります。

洗濯

家庭で洗濯を行う際に用いる水により、衣類を染めている染料が溶け出すことがあります。一般的に染料が繊維と化学結合で強固に結びついている場合は、容易に溶け出すことがありませんが、弱い力で結びついている染料の場合は、衣料が水により湿潤することで色落ち・色移りします。例としては、赤い衣服と白い衣服を同じ洗濯槽で洗うと、赤い衣服の色が薄くなり、白い衣服が薄っすらと赤みがかってしまうことが挙げられます。

人間のかく汗の主成分は水分ですが、この他にも塩分、アミノ酸など複数の成分が含まれています。これらの成分により、衣類を染めている染料の分子構造が変化してしまい、変色することがあります。また、人間は、体質の違いにより酸性の汗をかく人とアルカリ性の汗をかく人がいます。この違いで染料の溶出の程度が異なることがあります。

ガス

ストーブや自動車を使用した際に排気される窒素酸化物を含む反応性の高いガスが衣料表面に触れることで染料が分解し、変色が起こることがあります。生地の白色部分については黄色く変色することがあり、その他の色については色褪せたりします。衣類がガスと触れる場面は、製品の輸送時や在庫保管時に多く見られます。

実際に、衣類の色落ち・色移り・変色が起こるのは、前述した要因が複合している場合が多く見られると思います。これらのことを受けて、日本工業規格(JIS)では、色落ち・色移り・変色を評価する試験方法について、規格化が行われています。
製品トラブルを防ぐために、繊維製品を生産する際はJISの規格について生産初期段階から充分検討し、品質の高い製品を消費者に提供する必要があります。

参考文献

現場で役立つプラスチック・繊維材料のきほん 和歌山県工業技術センター 編 コロナ社