蚊を媒介とする感染症は、病原体を保有する蚊に刺されることによって起こるものです。主な蚊媒介感染症には、デング熱、ジカウイルス感染症、日本脳炎、ウエストナイル熱、黄熱、マラリアなどがあります。これらを予防するためには蚊に刺されないことが大事ですから、夏の風物詩である蚊取線香が役立ちます。

さて、その蚊取線香の発祥の地が和歌山県であることを御存知でしたか?

除虫菊の写真(小)

諸説ありますが、蚊取線香の原料である除虫菊(シロバナムシヨケギク)の種子を有田市の上山英一郎氏が明治18年にアメリカから輸入したことによるとされています。この除虫菊の花(子房)には、ピレトリンという殺虫成分が含まれています。このピレトリンは、人、犬、猫などには毒性が低い一方、昆虫類には強力で速効性の殺虫力があり、かつ抵抗性がつきにくいとされています。また、自然界中では分解されやすいという特長もあります。

除虫菊は、当初、乾燥した除虫菊頭部の粉末に木の葉や木の粉を混ぜ、火鉢や香炉で燻べて「蚊遣り(かやり)」として使用されていました。その後、明治23年には、長さ30cm位で燃焼時間約1時間程度の棒状の蚊取線香が、さらに明治30年には、現在と同じ長時間(7~8時間)燃焼型の渦巻型蚊取線香が開発され、県内で製造された蚊取線香が国内外でたくさん利用されました。しかし、昭和26年頃に、合成ピレスロイド(ピレトリン類似化合物)が開発されると、除虫菊を使用した蚊取線香は姿を消し、合成ピレスロイドを使用した蚊取線香、蚊取りマット、液体電子蚊取りなどへと変わっていきました。

ところが、現在、天然志向ブームにより、昔と同じ除虫菊を使用した天然蚊取線香が県内でも再び製造されるようになっています。また、今は殺虫剤だけでなく、ディート、イカリジンなどを主成分とする虫よけ剤(忌避剤)も数多く製造され流通しています。

渦巻き蚊取り線香のイラスト

当センターでは、県内産の未利用資源を虫よけなどに利用できないか、研究に取り組んでいます。もし、何か新しい原料を利用して医薬部外品、化粧品などの製品開発を目指しておられましたら、一緒に取り組んでみませんか?

(K.M)