「しっかりとラップをしていたのに中身が湿気ている。」このような経験はありませんか?こうなると、せっかく後で美味しく食べようと思っていたのに台無しですよね。これは、ラップや食品包装袋に使われているフィルム素材が、微量ながらも水分を通すからです。例えば、某メーカーのラップフィルムですが、1日に12g※程度の水分を通します。この数字が小さいほど水分を通しにくく、「水分のバリア性能が高い」と言います。
※温度38℃、相対湿度90%の環境下で、1日あたり及び単位面積(m2)あたりに抜ける水分量
一般的なものは、コストを抑えるために安価なプラスチック材料で作られており、比較的水分を通します。その結果として、ラップをしているにもかかわらず、いつの間にか中身が湿気ている訳です。一方で、ポテトチップスやコーヒー豆の包装袋は、内部の品質を維持するために、水分のバリア性能を高くする必要があり、その対策として金属蒸着(じょうちゃく)フィルムと呼ばれるバリアフィルムがよく使われます。このバリアフィルムは、アルミニウムを高真空で蒸発させて、膜としてフィルムに付けたもので、水分が通る量を前述のラップフィルムの30分の1以下に小さくすることができます。また、近年では、水分のバリア性能を高い状態で維持したまま、内部の様子が分かるようにしたいという要望もあり、透明な蒸着フィルムも開発されています。
水分をバリアすることは、今回お話ししたラップフィルムや食品包装袋だけでなく、医薬品包装、有機ELデバイスや有機薄膜太陽電池などにおいても重要な技術となっています。和歌山県工業技術センターでは、商品や製品がどの程度水分を通すかを調べる装置(Mocon社製PERMATRAN-W 3/33MG+)を保有しております。ご興味のある方は、是非お問合せください。
<T.M>
カテゴリ:コーヒーブレイク | 2019年07月09日