CGイメージ(ダイヤモンドの指輪)ダイヤモンドと言えば、光り輝く宝石を思い浮かべる方も多いと思いますが、非常に硬いことでも知られており、工業的には工具の刃先や研磨剤などに使われています。加えて近年では、ダイヤモンドから派生したダイヤモンドライクカーボン(以下、DLC)コーティングも使用されるようになってきています。

DLCコーティングとは

DLCとはダイヤモンド状の炭素という意味で、硬度と耐摩耗性があるために様々な部品に使われています。例えば、工具の刃先にコーティングすればその切れ味を長期間保つことができ、下の写真にあるように農薬噴霧ノズルにコーティングすれば、ノズル先端の磨耗を抑えて製品寿命を延ばすことができます。このDLCコーティングは、金属以外にもコーティング可能であり、例えば、PETボトル内壁にコーティングすることで、高いガスバリア性を持たせることができます。この技術によって、ホットドリンク用や風味を重視するワイン用のPETボトルが実用化されました。

DLCコーティングによって耐摩耗性を向上させた農薬噴霧ノズル
DLCコーティングによって耐摩耗性を向上させた農薬噴霧ノズル
(ヤマホ工業株式会社様ご提供)

DLCコーティングを構成するものとは

以上のように日常生活の様々なシーンで利用されているDLCコーティングは、黒鉛状の炭素sp2成分、ダイヤモンド状の炭素sp3成分、そして水素を加えた3成分から成っています。これら3成分の割合を制御することによって、硬度を要求される工具の刃先から柔軟なPETボトル内側のコーティングに至るまで様々な用途に利用することができます。なお、その製法ですが、大きなステンレス槽に対して真空引きを行い、その中でプラズマCVD等の技術を使ってコーティングを行います。こうすることで単なる黒鉛(スス)ではなく、硬いダイヤモンド状の膜を作ることができます。

DLCコーティングの規格とは

このようにDLCコーティングといっても、その成分比率によって得られる特性が大きく異なるため、DLCコーティングの分類や規格化を求める声が上がり、国際標準化機構(ISO)においてISO20523:2017「Carbon based films - Classification and designations」が制定されました。この規格ではDLCコーティングの成分比率による分類と分類のための分析方法について記載されています。しかしながら、ダイヤモンドも黒鉛も原子としては同じ炭素であり、せいぜい数マイクロメートルにしか過ぎないDLCコーティング膜においてこれらを識別するのは難しいとされています。

DLCコーティングの分析方法や分析前処理とは

そこで、我々のような公設試験研究機関(公設試)が集まって、DLCコーティングの分析方法やより正確に分析するための分析前処理について検討しています。このように公設試はいち早く企業様のニーズを汲み取り、連携してその解決方法を探ってまいりますので、技術的な相談事はお近くの公設試にお尋ねください。

参考リンク:産業技術連携推進会議(https://unit.aist.go.jp/regcol/sgr/index.html

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