地域資源活用部、機能材料担当のグループの研究成果が、日本化学会が発行している学術誌「Chemistry Letters」に掲載されました。
【論文タイトル】
Visible-to-ultraviolet photon upconversion in poly(vinyl alcohol) films and unusual quenching by boric acid treatment
https://doi.org/10.1093/chemle/upaf171
【概要】
和歌山県工業技術センターでは、フォトンアップコンバージョン現象を示すプラスチックフィルムの研究を行っております。これまでの研究により、色素開発及びフィルムの加工技術を活かして研究発表や知財化を達成してきました。今回発表した内容は、可視光から紫外光へ変換するフォトンアップコンバージョンフィルムについて、フィルムの発光特性とフィルム延伸加工が発光特性に及ぼす影響を考察しています。
これまでの研究で、フィルムを延伸加工することでアップコンバージョン発光が増強するということを見出してきました。しかしながら本研究で実施した可視光―紫外光変換の系では、逆にアップコンバージョン発光が阻害されてしましました。この結果について分光分析とフィルムのマトリックス構造と関連付けて考察を行い、延伸時に使用しているボロン酸が関係していることを確認しています。
紫外光を可視光から生み出す技術は、光触媒や光化学反応を中心に非常に注目されています。高効率で安定に紫外光を発する材料が完成することで、省エネや化学反応プロセスの効率化に貢献することができます。特にフィルム形状でのアップコンバージョン発光の実現は、大面積やフレキシブルなアプリケーションに広く期待されています。本研究では発光を阻害する現象を確認できたため、反対にそれを回避することで、効率よくエネルギー伝達を実現する材料の設計を目指しています。
出典:Akane Saito, Tomohiro Mori, Hitoshi Saomoto, Tsuyoshi Masuda, Masafumi Takagaki, Takeshi Mori. (2025)
"Visible-to-ultraviolet photon upconversion in poly(vinyl alcohol) films and unusual
quenching by boric acid treatment" Chemistry Letters, upaf171より引用
DOI: 10.1093/chemle/upaf171
【お問い合わせ】
地域資源活用部 機能材料担当
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2025年09月12日