和歌山県の産業の、「あんな話」や「こんな話」を紹介します。
日本有数の開発型化学企業の集積地
和歌山県では古くから繊維工業(織物や染色業などをはじめとする関連産業)が盛んでした。工業技術センターも、元々はこれらの輸出奨励支援目的に創設された経緯があります。
染色を行うためには染料が必要ですが、明治時代にはドイツからの輸入に頼っていました。第1次世界大戦によりドイツからの染料の輸入が途絶えたことから、国内での生産が必要となり、日本で初めて原料「アニリン」の合成と工業化に成功したのが和歌山市の「由良精工合資会社」(現 本州化学工業(株))です。
その後、染顔料の原料・中間体の製造が盛んとなり、日本における「有機工業化学発祥の地」となりました。
和歌山市は、独自の技術(合成技術)と製品をもつ開発型の化学企業が多くあり、国内でも有数の化学企業集積地となっています。
現在では、医薬品・農薬、電子材料など、製造分野も大きく拡大されており、品質向上/新規用途開発/製造技術の革新が続けられています。
高級ブランドやセレクトショップ、アパレルメーカーがこぞって採用する和歌山のニット
和歌山県は、知る人ぞ知るニット生地の産地でもあります。
前項でも紹介しているとおり、和歌山県は古くから繊維工業が盛んでした。当然、繊維生地の生産も盛んに行われており、特に明治初期に開発された「紀州ネル」(綿織物に起毛加工を施した丈夫で軽く保温性のある生地)は有名でした。
この紀州ネルで使われていた起毛加工を綿メリヤス*に応用したことで、肌着用の生地などの需要が急速に拡大し、大正末期には、丸編みニット生地の生産において全国シェア1位を誇る一大集積地となりました。
※「メリヤス」とはニット生地の編み方・編地の一つ。別名「天竺(てんじく)」「平編み」と呼ばれることもあります。
和歌山のニットメーカーで生産されるニット生地は、伸縮性や風合いなど生地の品質が高く、高級ブランドやアパレルメーカーで採用されており、ファッション誌などでも度々特集記事が掲載されています。
独自のアパレルブランドを起ち上げているニットメーカーも多数存在します。
お気に入りのカットソーやパーカーの生地は、実は和歌山のニット生地かもしれません。
生活必需品「家庭日用品」でシェアNo.1
和歌山県の海南市 及び 野上谷地域は、「棕櫚*(シュロ)」と呼ばれるヤシ科の植物の産地だったことから、この棕櫚の繊維を使った縄やタワシ、ホウキなどの製造が盛んでした。
※棕櫚は、弘法大師が中国から持ち帰り、この地域に植樹したという説があります。
棕櫚製品製造から始まり、時代と共に素材、生産技術、販路、製品分野などを改善・拡大したことで、現在では、家庭用品において全国シェア80%を超える国内最大の産地となっています。
和歌山の家庭用品業界は、キッチン・バス・トイレタリー・ランドリーなどの水廻り用品を中心に、多種多様な製品を展開・生産しています。
生活に必需の日用品ながら、デザイン性の高い製品も多く、品質や機能を知れば知るほど欲しくなる製品揃いです。
和歌山 発祥の〇〇?
和歌山が、「有機工業化学の発祥の地」ということは既に紹介していますが、この他にも和歌山が発祥地と言われているものはたくさんあります。
まずは、「金山寺味噌」「醤油」「かつお節」です。
「金山寺味噌」は、鎌倉時代 に宋(今の中国)に渡った法燈国師が「径山寺味噌」を日本に持ち帰り製法を伝えたことがルーツとなったという説と、高野山真言宗の開祖、空海(弘法大師)が、唐の金山寺から持ち帰り広めたとされる説があります。(諸説あります)
「醤油」は金山寺味噌の醸造過程で桶に溜まった汁に旨味があることに気付き、これを改良をしたものが醤油の起源と言われています。(諸説あります)
「かつお節」は江戸時代中期に印南町の漁民「角屋甚太郎」が仲間と共に試行錯誤の上、製法を考案しました。
この他にも食べ物では「胡麻豆腐」「高野豆腐」「なれ寿司」なども和歌山が発祥です。
和歌山発祥の農産物
「南高梅」
明治35年、上南部村の高田貞楠氏が、梅の苗を譲り受けた中に粒が大きく、美しい紅のかかる優良種が一本あるのに着眼し、その木を母樹として育成し、増植を行いました。その後、南部高等学校教諭 竹中勝太郎氏が5年間調査研究の結果最も優れたものを南高梅と名付け発表しました。
「有田みかん」
天正年間に、糸我荘中番付の伊藤孫右衛門が紀州藩の委託を受け、肥後八代から丸蜜柑の苗木を導入し、栽培を始めたのが起源といわれています。(諸説あり)
「レタス栽培」
和歌山県すさみ町江住(旧江住村)は、1941年(昭和16年)に日本清浄蔬菜協会が設立されたのを機に、レタスの冬期栽培を開始し、日本でのレタス栽培発祥の地となっています。
「真妻わさび」
和歌山県日高郡印南町は「真妻わさび」の発祥地として知られています。
「蚊取り線香」
有田市でみかん農園を営んでいた「上山栄一郎*」によって、1890年に世界初となる蚊取り線香が開発されました。
※キンチョー(大日本除虫菊株式会社)の創業者
「備長炭」
江戸時代、品質の高いことで知られていた田辺炭に目をつけた紀州田辺(和歌山県田辺市)の炭問屋「備中屋長左衛門」が、「備長炭」の名を付けて、江戸に卸しました。
当時、田辺炭は秋津川村(現在、田辺市秋津川)で盛んに産出されており、秋津川が「備長炭発祥の地」とされています。
「全身麻酔」
那賀郡那賀町出身の医者 華岡 青洲(はなおか せいしゅう)は、江戸時代の文化元年(1804年)に、歴史上世界初の全身麻酔手術を成功させ、日本の医学に大きな業績を遺しています。
フルーツ王国
和歌山県では各種のフルーツが生産されおり、生産量はもちろん、種類の豊富さや品質の高さなどからフルーツ王国と呼ばれるほどです。
これは、農業算出額にも表れています。
全国的なデータでは農業算出額のうちフルーツの割合が10%程度なのに対し、和歌山県ではフルーツが約70%が占めています。
代表的なものでは、「みかん」「梅」「柿」が、それぞれ全国第一位となっているほか、
「はっさく(八朔)」「キヨミ(清見)」「サンポウカン (三宝柑) 」「バレンシアオレンジ」「ジャバラ (じゃばら)」なども全国第一位となっています。
フルーツとは少し違いますが、「山椒(サンショウ)」も圧倒的なシェアで全国第一位です。
この他、「桃」や「イチゴ」なども有名です。
紀の川市桃山町は「あら川の桃」として有名な桃の産地で、桃の花の季節には一面が桃色の風景を見ることができ、収穫の時期には桃の直売所に長蛇の列ができます。
また、猫のタマ駅長で有名な「わかやま電鉄貴志川線」には、車両にイチゴのデザインがあしらわれた「イチゴ電車」があり、紀の川市貴志川町の「イチゴ狩り」に向かう乗客を楽しませています。
白浜町では、日本初の国産珈琲豆が生産されています。
伝統が受け継がれる工芸品
和歌山県には国が指定した伝統的工芸品が3品目あります。
「紀州漆器」「紀州箪笥」「紀州へら竿」
また、和歌山県が指定した郷土伝統工芸品が、9品目あります。
「保田紙」「御坊人形」「皆地笠」「那智黒硯」「野鍛冶刃物」「紀州雛」「棕櫚箒」「根来寺根来塗」「紀州高野組子細工」